はじまりの話

Green Vibration展とはこういう作品展です。
自由展で会いましょう。
~Green Vibration展の33年~
                         美術運動No.129(2000年9月より転載一部訂正)
-はじまりの話-

Green Vibration展は1991年に始まり、今年で33年になります。
よく続いたなと自分たちでもびっくりしています。
なぜなら、企画運営しているスタッフはアートに関しては素人集団。
むしろ20年来のバンド仲間でサラリーマン、製造業者、元看護婦、塾の先生、主婦という顔ぶれでした。
しかも長く続けようと思っていたわけでもなく来年の予定はいつも未定。
常に出展者と見に来て下さった方々のエネルギーを頂戴して気がつくと毎年1回のペースで続いてきたのです。
もともとアートを見るのは好きでロック世代の私たちにとって
音楽もアートも同じくらいどこか生活にひっかかってはいたものの
まさか自分たちで、作品展を企画運営して行くなんて思いもよらなかったことです。
でも、実際にやってみるとこんなに楽しいことはめったにありません。
私はスタッフとして夫と当初から関わってきましたが、
当時この作品展を始めるにあたってその動機は実に単純なものでした。
きっかけとしてもっとも大きかったのは1987年の夏に横浜大倉山記念館周辺で行われた
「大倉山アートムーヴ'87」であったと思います。
夫の実家が大倉山にあったこともあって、常にそこは私達の散歩コースでした。
その頃は、バブル最盛期ということもあって横浜でもあちらこちらで
歴史のある建物のライトアップがありました。
その中で大倉山記念館という昭和初期に建てられたギリシャ風の建物も
アートムーヴで前庭に水鏡が用意され、
建物全体に水紋を映し出すというスケールの大きいライトアップがありました。
しかも、その周辺にも不可思議なオブジェが配され
日常的なその場が一転して非日常的な場と化していたのです。
これには、本当に驚かされました。
そして、人間としてとても心の深いところにとても原始的な快感を覚えたのです。
それは、チンパンジーが手をたたきながらキャッキャッと喜ぶ姿ととても似ていたように思います。
言葉もいらず、ただ内側から湧いてくるいいようのない感情に驚いている自分がありました。
特に美術館でもなく、フラッと何の期待もないところを見事に裏切ってくれたその行為は
いつしか自分も裏切りたいという欲求へと変化していったのです。
私達が作品展を開催する会場にしても、東横線大倉山駅から徒歩6分程度の所に大倉山記念館があり、
市民に開放しているギャラリーは中庭をぐるりと囲んだ回廊式のギャラリーで充分魅力的なものでした。
この場所があるからこそやりたい!と思えたのかもしれません。
また、私達の周りにもコンサートで知りあったり旅先で出会った人、
友人の職場でも何かを作ったり、描いたりしている人も結構いて、
そんな自分も含めた個々が、自己を表現する場をつくれたら、面白いんじゃないか!と思ったわけです。
それから3年の月日が経ち、我が家の3番目の子もようやくおむつがとれようかという時、
私達は友人達にこの計画を話しました。幸い、友人達もこれは面白そうだ!
ということになり、協力してくれることになりました。
そして、ジャンルもコンセプトも自由、
唯一楽しむための出会いの場としての作品展を始めることにしたのです。
当面の費用はスタッフの出資金方式とし、搬入日に出展者から出展料
として作品展が最低限まかなえる額を頂戴することとしました。
会場の抽選会、チラシ作り、出展者への声かけ、一般公募、事務処理、
どれも初めてのことでしたが、丁度、畑を耕して種まきをするそれとどこか似ていました。
第一回目のチラシの呼びかけ文にこんなくだりがあります。

この作品展は一人ひとりの心のメッセージです
 芸術家でも、またその技法を持たない人でも
 心の開放による自由な表現でv
 ジャンルに問わず形にしようという試みです
 心に花を咲かせましょう
 初めの一歩としてここに集い
 出会いの空間にしたいと思います
 どうぞ遊びに来て下さい

そして、予想以上に出展者も集まり、総勢32名で第一回Green Vibration展は 始まったのです。

-多彩な出展者と作品-

こうして、毎年三十数名から五十名程の一歳から八十八歳迄
(子供の部も第二回目から参加)の幅広い層の出展者によって現在に至っています。
出展者も毎年出されている常連さんが3分の1、初めての方が3分の1、時々出す方が3分の1程度です。
決して固定はしていませんので毎年、
「今年はどんな作品展になるんだろうか?出展者は集まるのだろうか?」とヒヤヒヤしています。
いつも「どんな作品が多いんですか?」と聞かれますが
「搬入日の夕方になってみないとわかりません。」とお答えしています。
実際、当日まで何を持ってくるか大抵わからないのです。
出展者は2m×2m以内という条件さえ守って下さればいいのです。
出展者もイラストレーター、デザイナー、画家、工芸作家、陶芸家、
ペインティングアーティスト、美術学校の生徒、サラリーマン、畳屋、
時計屋、主婦、鉄道模型製作業、レストラン店長、社会運動に関わっている人、
フリーター、教師、赤ん坊、幼児、小学生、中学生、高校生、歌の好きな老人…などなど実に多彩です。
作品も油絵、水彩画、イラスト、写真、オブジェ、タペストリー、竹細工、
陶芸、籐細工、木工品、エッチング、紙細工、針金細工、詩、貼り絵、
段ボールアート、ペインティングアートetc…
パフォーマンスでは、夫婦神楽や和太鼓、バリダンス、ギター演奏、
二人芝居、影絵、インスタレーション…と多岐にわたっています。
もっとも、年々、ギャラリーでのパフォーマンスに対する規制が
厳しくなっており、あまり音をたてるようなことは現在は出来ません。
これだけ思考も年齢層も様々な作品ですが、出展者は自分で作品を持ち込み
気に入った場所へ自ら展示をし、とっぷり日が暮れるころには不思議と収まってしまうのです。
大倉山記念館ギャラリーが中庭を持つ左右対称の回廊式のギャラリーということが、
どんな作品と並んでも調和させてくれているのでしょうか?